漫画ストーリー、キャラの作り方で、初心者でも新人賞が取れる!
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漫画シナリオの例:クイズランド

今回は漫画原作の例として、
私の作品を載せてみました。

参考にしてみてください。
今回の作品は他の作画家さんへ見せる都合で、
理解しやすいように、セリフなどで説明を
長くしています。

自分でストーリーと絵を描く場合は
説明は少なめにしましょう。



○ 河川敷の堤防
  友達、数人と下校している翔子。
翔子「あれ?」
  前方をランドセルを4つも抱えた右城一也が、
  その重さにひいひいいいながら歩いている。
女の子A「あ、また、右城が鞄、持たされている」
女の子B「可哀想」
  翔子が走り寄っていく。
一也「(笑顔で)やあ、翔子」
翔子「幼なじみとして、忠告するわ」
一也「ん?」
翔子「鞄持ちなんて、断っちゃいなさい」
一也「仕方ないだろ。いつも勝負で負けちゃうんだから」
翔子「腕相撲とか、走り幅跳びとか、
   体力勝負のものばかりじゃない。
   みんな、一也に体力ないことわかっていて、
   勝負しているのよ。フェアじゃないわ」
一也「でも、勝負を断ったら、断ったでいじめられるし」
翔子「じゃあ、一也の勝ち目のあることで勝負すればいいじゃない」
一也「ある?」
翔子「(おつむを指差し)ここを使うのよ、ここを」

○ 街(別の日)
  気乗りしない一也を手招きしながら連れていく翔子。
N「20××年、日本の歴史上かつてないほどの好景気が訪れ、
  世の中には物があふれた。
  食べ物は豊富にあり、
  車や家を手に入れても喜びを感じられない世界。
  お金がないころに手に入れたかったものを
  すべて手にした人々は、
  しだいに物を欲しがる気持ちを失った」
一也「どこに行くんだい、いったい」
翔子「日本で、今、一番、トレンドなものってなーに」
一也「それは‥」
N 「欲望のやり場にこまった人々が次に求めたのは、
  『知識』だった。
  かつて人が持っていないものを持つのがトレンドだったように、
  誰も知らないことを知っている人がうらやましがられ、
  自慢げに街を歩いていた」

○ クイズ喫茶
  店の前で躊躇している一也。
一也「俺、クイズはやらないし」
翔子「だから、私が教えてあげる。一也は頭いいんだから、
   クイズなら、すぐ覚えられるよ」

○ クイズ喫茶店内
  ステージで大学生風のいかつい男とスーツ姿のやせた男が
  対戦している。
  コーラを飲みながら一番前の席で観戦している翔子と一也。
  通信式自動問題読みマシーン「QMAN W」が問題を検索し、
  読み始める。
問題「ネットをはさんで対戦する球技の中でネットの幅が
   一番広いのは……」
  ポーンと大学生のランプがつく。
翔子「最後の「は」が上がり気味に発音されていたし、
   問題の口調が早かったから、
  まだ先が続きますよということよ。  
  「……はテニスですが、一番狭いのは何でしょう?」
  ときっと続くのよ」 
  と一也に説明している。
男「卓球」
  ピンポン、と正解の判定。
翔子「ほらね」
問題「土俵入りの型の名前にその名を残す、大相撲第十代の横綱は」
  問題の途中で大学生のランプが付く。
男「雲竜久吉」
  正解の判定。
  得点は5対0で男の圧倒的勝利。
男「とっとと帰って、クイズの勉強でもしてな。
  どうせ俺には勝てないだろうけどな」
  恥ずかしそうに出て行くスーツ姿の男。
  その言葉にムカッとしながら、一也に
翔子「今の問題だったら、わたしはもっと早いポイントで
   答えられたわ」
  男、それを聞きつけ、
男「生意気なことを言ったのは、誰だ」
翔子「(立ち上がり)私よ」
  男を睨み付ける。
男「なんだ、ガキじゃないか。ったく、おっぱいもないくせに、
  一人前の口きくんじゃないよ」
翔子「(怒りで真っ赤になって)その日本語、間違っってわ。
   お、おっぱいは、誰にだってあるし、
   おっぱいとクイズの強さには何の因果関係もありません」
男「へーっ、ほんとに君にもあるの」
翔子「当たり前でしょ」
男「じゃあ、俺とクイズで勝負して、
  負けたら証拠を見せてくれるかい」
翔子「望むところよ」
一也「(翔子の腕をつかんで)翔子、だめだよ」
翔子「まあ、見てて」
  とステージにあがる。
N「なんでも好きなものが簡単に手に入るようになった時代。
  欲望のやり場にこまった人々が次に求めたのは、
  『知識』だった。
  自然と日本中にクイズブームが訪れ、
  学園祭や町おこしのイベントなどでクイズ大会が行われた。
  テレビをつければ、
  必ずどこかのチャンネルでクイズ番組が放映されていた」
  早押し機に手をかけ、男と向かい合うと、
  喫茶店中が静まり返り、いやがうえにも緊張感が高まる。
男の顔に、
N「テレビで放送されるような大きな大会の優勝者は
  『クイズ屋』と呼ばれ、プロ野球やプロサッカー選手以上の
  人気を得ていた」
男「ルールは、五○二×でどうだ? 
  五問正解で勝ち、二問不正解で負けだ」
翔子「分かったわ」
N 「街を歩けば、どこからともなくクイズに答える声が
  聞こえてくる。
  世界は日本のことをこう呼んだ。『クイズランド』と……」

問題「オリンピック競技での日本人最初の金メダリスト」
  男がボタンを押す。
問題「お……」
翔子N「押し負けた。読ませ押しね。ボタンを押してから、
   問題が止まるまでには、コンマ何秒かの時間がある。
   人間が読むのをリアルに再現しているわけだけど、
   それを利用して早めに押して、
   次の一文字を聞くという高度なテクニックが使える。
   彼が押した後に、「お」という言葉が聞こえたから、
   問題の続きは、
  「男は、第九回アムステルダム大会の二段跳びの織田幹雄
   と二百メートル平泳ぎの鶴田義行ですが、
   女子最初の金メダリストは第十一回ベルリン大会の誰」
   と続くんだわ」
男「二百メートル平泳ぎの前畑秀子」
  正解の判定。
翔子N「競技は何?」というふりになっても正解できるように、
  人物名と競技名を同時に答えたんだ。
  すこしずるい気もするけど、それだけ場数を踏んでいる
  ということね」
  一也もじっと戦況を見守っている。
問題「消費税法に規定されている、現在の消費税率は何%?」
  男の手は動かない。
翔子N「えっ、こんな簡単な問題なのになぜ」
  翔子、ボタンを押す。 
翔子「5パーセント」
  ブーと不正解の判定。
翔子「嘘。なんで?」
正解「答え、4%」
翔子「いつから4%になったの? 
   家の近くのコンビニでは今でも5%よ」
男「ばかめ。消費税法によるとだな、消費税の税率は4%、
  地方消費税の税率は消費税率の25%つまり1%、
  4+1=5で一般的に消費税は五%とされてるんだよ」
翔子N「わざとだ。男は答えられたのに、
  わざとわたしに答えさせて恥をかかせたんだわ。
  一問も間違わずに、
  五問正解しなければいけなくなった……追い込まれた」
  あせる祥子。
男N「これで俺の勝ちは決まったな。早押しは知識量じゃない、
  精神を折られたほうが負ける」
問題「フランス革命の時、医師出身の議員で……」
  ポーン。男のランプがつく。
翔子「しまった!」
  翔子、押し負けて唇を噛む。
少年A N「あーあ、あの子、一問も正解しないうちに間違えた
  ものだから、思い切りがなくなって、押せなくなっている。
  フランス革命、医師出身の議員ときたら、
  クイズで出題されそうなのは、
  処刑道具であるギロチンの発案者ギヨタンしかいない。
  もし、ギロチンを答えさせる問題なら、
  「フランス革命の時、医師出身の議員ギヨタンが……」
  とでもなるだろう。
  つまり、文節の最後が「が」か「で」で答えが変わってくる」
男「(余裕の表情で)ギヨタン」
  正解の判定。
  二問省略し、男が四問正解し、祥子は正解0の状態。
問題「シャーロックホームズが『最後の事件』でモリアーティ教授
  と……」
男「(ボタンを押し)「ライフェンバッハの滝」
  勝利のくす球が割れ、紙ふぶきが男に舞い降りてくる。
男「なんだ、口ほどでもないな。俺から、
  一勝も奪えなかったじゃないか」
  悔しそうに俯いたままの翔子。
男「では、約束を守ってもらうよ。君のどこにおっぱいがあるのか、
  証拠を見せてもらおう」
翔子「……」
男「さあ、どうした」
  一也が慌ててステージに駆け上がり、翔子の手を取る。
一也「行こう」
男「おうおう、今度は恋人登場か。おっぱいもないくせに、
  やることだけは一人前だな」
翔子「わかったわ、見せればいいんでしょ、見せれば」
一也「翔子ちゃん!」
  困り果てる。
  男、観客から非難の視線を感じ、
男「冗談に決まっているだろ。ちょっとお灸をすえてやっただけさ。
  ガキはなあ。大人のやることを黙って見てりゃあいいんだよ。
  力も知識もないんだからな」
  いきりたつ翔子を制し、
一也「あんた、ほんとにクイズが好きなのか?」
  男、一瞬驚いた顔をしたかと思ったら、すぐに笑いだし、
男「もちろん好きだ。
  でも、俺に負けて悔しがる人間をいたぶって遊ぶのは
  もっと好きだぜ」
  それを聞いた一也の目が鋭くなった。
一也「分かった。今度は俺が相手になろう。
  俺はお前よりも何倍も強い」
男「ああ、何だと。面白い。かかってこい」
 ブルースリーのように手招きした。
一也「そう焦るな。今はだめだ。塾に行かなくちゃならない。
  七時にまた来る」
男「ふん、塾か。くだらんな。でも、まあいい、
  楽しみは後にとっておくとするか。
  今夜七時。こてんぱんにしてやるから、
  覚悟してこいよ。あははは」
  一也、翔子の手を引いて出て行く。
  二人を目で追う少年A。

○ 路地
  一也が翔子の手を引いていく。
  翔子、いつになく格好いい一也に胸キュン。
翔子「本当に対戦しに行くの?」
一也「えっ」
翔子「だって、一也、クイズなんて」
一也「ははは、嘘に決まってるだろ。はったりだよ。
  俺はクイズはしない。でも、ああでも言わなかったら、
  あの場は収まらなかっただろ?」
翔子「なによ、それ」
一也「相手は全国大会に出場するようなクイズ屋なんだろ。
  小学生の俺たちに勝てるわけないよ」
翔子「そりゃ、そうなんだけど」
  翔子、急速に心が冷めていく。
  一也と手を握っていることに気づき、
翔子「いつまで、握ってるのよ」
  振り解く。

○ コンビニ
  雑誌コーナーで、雑誌を立ち読みしている翔子。
翔子「ふん、一也の意気地なし。胸ドキドキさせて損しちゃった」
  並んでいる雑誌はクイズ雑誌ばかり。
  アイドルクイズ屋、答屋光一郎特集の載った雑誌がある。
  少年クイズ、クイズチャンピオン、等等。
  通信式自動問題読みマシーン「QMAN W」の問題集を
  目で追っている翔子。
翔子「こうなったら、私がもう一回、勝負をしてやるわ」
  店の外を誰かが横切る。
  翔子、ハッとし、表に飛び出す。

○ 同・表
  出てきた翔子が通りを見つめる。
  歩いていく一也の後ろ姿。
翔子「クイズ喫茶の方向だ。……まさか」

○ クイズ喫茶内
  入ってきた翔子の驚く顔。
  一也と大学生がクイズステージで向かい合っている。
男「逃げずに来たのは誉めてやるよ。
 でも、負けると分かっていて来るなんて、馬鹿なやつだ」
  早押し機を握る指先を見て、ニヤリとする男。
  翔子、気づき、
翔子N「駄目よ、一也。押し込みをしなくちゃ」
  男の早押し機のボタンは、
  遊びの部分を利用してランプがつくギリギリのところ
  まで押して待機しているのに、一也は押し込みをしていない。
翔子N「早押しクイズは1000分の1の速さを競うのよ。
  ただでさえ、相手は強いのに」
問題「チェコ語で……」
  ポーン。男が豪快なアクションで回答権を得る。
問題「『労働』…」
翔子N「答えは、「ロボット」だろう。
  チェコ語で『労働』という意味がある。チェコの作家、
  カレル・チャペックの『R.U.R.(エル・ウー・エル)』と
  いう戯曲の中で生み出した人造人間「ロボット」が、
  今では誰もが使っている「ロボット」という言葉の発祥だ。
 「労働」まで聞けば私でもわかるが、
  男は「チェコ語で……」の辺りで押していた。
  わたしは、チェコ語なんか「ロボット」以外に知らないけれど、
  あの男は次にどんな言葉が来ても対応できるような
  チェコ語の知識があるとでもいうのだろうか?」
問題「ヘミングウェーの名作『老人と海』。最後……」
  ポーンとまたしても、男のランプがつく。
翔子N「文学の問題はよく出題されるから、
  作品を読んだことがなくても、問題になりそうな部分は
  覚えている。
 『老人と海』の書き出しは「彼は年をとっていた」で、
  最後は「老人はライオンの夢を見ていた」だ。
  これは、このままストレートに
 「老人は、どんな動物の夢を見ていた?」とでも続くのだろう。
  ちなみに、老人の名前は、サンチャゴだ」
男「ライオン」
  正解の音。
  しかし、拍手をする人はいない。
  みんな、クイズが強いからといって威張っているこの男に
  うんざりしているのだ。
男「何だ。口ほどにもない。
  やっぱり、お前も知識のない、ただのクズだな」
 一也は男の挑発に表情一つ変えない。
一也「もう一度訊く、あんたはクイズが好きか?」
男「何度でも、答えてやるよ。クイズが好きなのは好きだけどなあ、
  お前のような弱い、知識のない人間をいたぶることのほうが、
  ずっと好きだぜ」
  一也は大きくため息をついたと思ったら、
  ポケットからイチゴジャムの小瓶を取りだし、
  ふたを開けて匂いをかぎ出した。
男「何やってんだお前。頭がおかしくなったのか?」
  一也は、イチゴジャムの匂いをかぎながらうつむき、
  集中するように目を閉じる。
  少年Aが一也の様子に興味を示して見つめる。
  一也の毛が生き物のように動き出す。思わず身を乗り出す翔子。
  黒髪が波のように動きながら、白くなっていく。
翔子「一也……」
男「お、お前。その白髪……。まさか」
  うろたえ始める大学生。
少年A「あ、あれは……」
翔子N「聞いたことがある。
  たちの悪いクイズプレイヤーがいる街にふらりと現れ、
  勝負を挑み、易々と負かしていく白髪の小学生。
  小学生が大人に勝てるわけがないから、
  単なる噂だと思っていたけど、
  まさかクイズが得意だというそぶりなど
  一度も見せたことがなかった一也が、噂の小学生なの?」

男「髪を白くするなんて、はったりだ。
  お前が噂の小学生なわけがない。
  第一、押し込みも知らないじゃないか。そんなの常識だぞ」
  男が叫ぶ。
一也「知らないんじゃなくて、知ってるけれどやらないだけだ。
  あんたは押し込みをしてまで戦うほどの強敵じゃない」
男「くっ、クソ」
  男は一也を睨みつけた。
翔子「(目を見開いて)あれが一也……。まるで別人だわ」

問題「1869年にナポレオンV世が……」
  一也のランプが光る。
翔子「早すぎる」
翔子N「わたしがナポレオン三世の関係で知っているのは、
  彼がバターよりも安く作れて日持ちのする代用品を公募した
  コンテストに入選した食品が始まりである食べ物、
 「マーガリン」くらいだ。
 「1869年にナポレオン三世が主催したバターの代用品の案を募集
  したコンテストで入選した、
  ギリシャ語で『真珠』という意味の食品は何?」
  といった問題だろうか?いったい一也は、どう答えるのだろう」
一也「メージュ・ムーリエ」
  正解。
  翔子、ぎゅっと握りこぶしを作る。 
翔子N「メージュ・ムーリエとは、そのマーガリンを考案した科学者。
 「1869年に…」という年からはじまるふりだったから、
  経験的に人名 を答えさせる問題だと予想したんだわ。
  この緊張感の中で、尋常じゃないほどに早い判断力だわ」

問題「カロチンやエルゴステリン……」
  また、一也のランプがついた。
翔子「カロチン? エルゴステリン? 科学用語っぽい問題ね。
 わたしの苦手ジャンルだ。さっぱり、答えが予想できない」
一也「プロビタミン」
  正解の判定。
  両者のポイントが2対2で同点になる。
翔子N「答えを聞いて思い出した。
 体内でビタミンに変わる物質をプロビタミンというのだ。
 カロチンは体内でビタミンAに変わるプロビタミンA、
 椎茸などに含まれるエルゴステリンは紫外線を浴びてビタミンD
 に変わるプロビタミンDなのだ」
  さっきまで威勢のよかった男の額に汗が浮かんでいる。
男「お前、本当に小学生か?」
一也「ああ、そうだよ。
 でも、普通の小学生とは一つだけ違うところがある。
 それは、誰よりもクイズを愛しているということさ」

問題「自分の母親をモデルに……」
  一也のランプが付く。
一也「フレデリック・オーギュス・バルトルディ」
  正解の判定。

問題「世界の国旗の中で唯一、表……」
一也「パラグアイ」
  正解の判定。
  得点は、4対2で一也のリーチ。
  
解説「バルトルディは、自分の母をモデルに、
 ニューヨークの「自由の女神」を設計したフランスの彫刻家。
 パラグアイは、表と裏でデザインが異なった国旗を使っている」

翔子「あと一問正解で一也の勝ちね」

一也「負けを認めるなら、負けたらクイズを二度とやらない
  という約束は取り消してやってもいいぞ」
男「誰が負けを認めるか。今から逆転してやる」
  男は一也に見えないように、リ
  モコンのような装置のボタンを押す。
翔子「あっ!」
問題「スウィフトの小説『ガリバー旅行記』で……」
  ポーン。男のランプが点滅。
男「ラピュータ」
  正解のベル。会場がどよめく。
翔子「確かに、ガリバーが旅した国の中には、
  空を飛ぶ国「ラピュータ」はある。
  でも、小人の国「リリパット」、巨人の国「ブログディンナグ」、
  馬の国「フイヌム」と四つの国を旅したのだし、
  この先どんなふりの問題なのかまだわからなかったはずだ。
  今の押しで答えられるはずがない。
  さっきのリモコンを不正に操作したんんだ」
翔子「ちょっと、待って」
  と近づいていく。
翔子「今の問題……」
  一也、やめろ、と手で制す。
翔子「で、でも…….」
  不安そうな翔子の顔を見て、優しく微笑む一也。

問題「競技の『なぎなた』」
  二人同時にボタンを押した。
問題「で……」
  一也に解答権のランプが付く。
一也「すね当て」
  数秒間の沈黙のあと、正解のベルの音。
  翔子、飛び上がって、
翔子「やった。一也の勝ちだ」
男「う、嘘だ。俺が小学生なんかに負けるはずがない」
  机を叩いて悔しがる男。
一也「俺の知識は四次元だ。
  知識が点でしかないお前に勝てるわけがない」
男「くそっ、生意気なガキが」
  男は、立ち上がって握りこぶしを振り上げた。
  怒りで震えているのが、手に取るようにわかる。
  一也に殴りかかるような素振り。
  翔子が全力で突進し、男に体当たり。
翔子「クイズはみんなで楽しむものよ。
  あんたなんかにクイズをやる資格ないわ」
男「何だと」
  そう言って手を振り上げたものの、会場の冷たい目が襲い、
  たじろぐ男。
  逃げるように店を出て行く。
  会場は拍手で包まれる。
一也「翔子、助けてくれてありがとう」
一也の髪、黒に戻っている。
翔子「一也が伝説の小学生だったなんて……。
  でも、今の問題、よくあんなところでわかったね」
一也「真剣勝負の場で明らかな不正をするなんて
  負けを認めたも同然だ。
  だから、精神的に優位に立てた僕は、確信はなかったけれど、
  多分『使われる四つの防具は面、胴、篭手と何?』
  っていう問題だと思って押すことができた。
  剣道になくて、なぎなたにあるのは『すね当て』だけだから
  問題になりやすいんだよね」
少年A「彼だ。彼こそ探していた少年だ」

○ 河川敷の堤防
  一也がたくさん鞄を持たされて歩いて下校していく。
  翔子が近寄っていく。
翔子「まだ鞄持ちしてるの」
一也「あはは」
翔子「クイズで勝負すれば勝てるのに、しないのね」
一也「こないだは、恥ずかしい姿を見せたね。
  翔子に白髪の姿を見られるのが嫌で、
  勝負に行かないって言ったのに、見られていたんじゃあ、
  意味なかったよ」
 翔子、一也が早押し機を押すまねをして、
翔子「ポーン。フレデリック・オーギュス・バルトルディ、
  だもんね。でも、どうして、ジャムの匂いを嗅いだら
  髪が白くなって、クイズに強くなったの?」
一也「ああ、あれね。俺は幼いころから、
  父さんにクイズの勉強をさせられていてさ。
  今は楽しめているんだけれど、最初のころは嫌でね。
 『どうして、学校のテストにも出ないような、
  どうでもいいことばかり覚えなきゃいけないんだよ』
  ってよく怒鳴ってた」
翔子「そう」
一也「そんな日は必ず、母さんが夜食だと言って
  トーストを持ってきてくれるんだ。
  脳の糖分が不足すると記憶力が悪くなるからって、
  イチゴジャムがたっぷり塗ってあるやつさ。
  それを食べると集中力が出てくるんだよね。
  母さんの愛情を感じるっていうか……。
  なんともいえない不思議な感じ」
翔子「いつもイチゴジャムなの?」
一也「ああ、だから、
  イチゴジャムの匂いをかくと反射的に集中力が増すんだよ。
  でも、髪が白くなる理由はわからないな」
翔子「きっと、クイズの神様が乗り移るのよ」
一也「どうしてそんなことが分かる?」
翔子「神様って、白い髪してるっぽいじゃない」
一也「ぷっ、そうか」
翔子「鞄、おもちましょうか、神様」
一也「いいよ、大丈夫」
少年A「僕が持ちましょう」
翔子「えっ」
一也「えっ」
  背後からの声に同時に驚きの声を出して振り返る翔子と一也。
  小学生らしき少年Aを見て、顔を見合わせる翔子と一也。
翔子「君、誰?」
少年A「僕は、久伊豆村から来た答屋清次郎という者です」
翔子「答屋って、まさか二年前に彗星のように現れて、
 クイズの全国大会『QUP』で優勝した超一流のクイズ屋、
 答屋光一郎の知り合い?」
清次郎「それは、兄です」
  清次郎は一也に視線を移す。
清次郎「今度の日曜に久伊豆村で『打ち会』といクイズ大会
  があります。
  優勝者は、年に一人選ばれる久姫の婚約者となることが
  できるのです。右城さん、『打ち会』で優勝して、
  久姫と結婚してください」
 少し間を置いて、
翔子「はああ?」
一也「はああ?」

続く
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